2008年11月23日

【めぐり逢う大地】アメリカ大陸横断鉄道の影



081123-2.jpg ウィル・スミスケネス・クラインが主演した歴史物のコメディ映画に『ワイルド・ワイルド・ウェスト』がある。アメリカの南北戦争が終わった時代を舞台に、南軍の生き残りが、スチームで動く巨大ロボットでアメリカ合衆国に逆襲する話である。アフリカ系のウィル・スミスが、北軍の騎兵隊大尉というかなり無理な設定も気にならないほど、軽快なテンポで話は進む。

 この映画のクライマックスの少し前に、当時のグラント大統領がユタ州(当時は準州だった)での記念式典で敷設された鉄道にゴールデン・スパイクを打ち込むシーンがある。ケネス・クラインが見事に化けたグラント大統領が、東西両方から伸びて接続された線路を固定するため、最後の釘を打ち込む。そのとき敵役のラブレス博士が登場して、グラント大統領はさらわれてしまうのだ。

 東西同時に工事が始まったアメリカ大陸横断鉄道が、一本になったときに行われたものが、この記念式典である。

 
大陸横断鉄道の顔役リーランド・スタンフォード
 南北戦争が終結したすぐ後にリンカーン大統領は暗殺されてしまい、北軍の将軍だったユリシーズ・グラントがそのあとの大統領になった(正確には次の次)。しかし、リンカーンの時代に西部のカリフォルニアのサクラメントと、東部のネブラスカのオハマ(東部はオハマまでは鉄道網が完成していた)を起点とした大陸横断鉄道のゴーサインが下っていた。一八六二年の太平洋鉄道法である。

 西はセントラルパシフィック鉄道シアラネバタ山脈を削って線路を引き、東はユニオンパシフィック鉄道が鉄道を敷設した。一八六三年から工事が始まったが、西側は峻険なシエラネバダを掘削しなければならず、東は大平原で線路の敷設は楽だったが、インディアンに襲撃されて工事ははかどらなかった。西と東から同時に始まった工事は、六年後の一八六九年五月十日にユタのプロモントリーサミットで一本になった。

 記念式典でゴールデン・スパイクを打ち込んだのは、グラント大統領ではなく、セントラルパシフィック鉄道の社長であったリーランド・スタンフォード。リーランド・スタンフォードは、その名のとおりスタンフォード大学の創設者である。

 映画の中でダルグリッシュの上司として登場する紳士はスタンフォードだろうか。スタンフォードかどうかはわからない。しかし工費を気にする様子などをみると、ゴールド・ラッシュの影で食品雑貨商として成功したビジネスマンのスタンフォードであってもおかしくないと思わせる演出になっている。

 スタンフォードはなかなか子宝に恵まれず、晩年になってやっと息子が生まれた。その一人息子が若くしてチフスで死んでしまったので、牧場として所有していた土地、パロアルトに大学を創設したのである。息子の名前を残すためだったらしい。

 ちなみにユリシーズ・グラントは汚職にまみれた大統領として悪名高いが、汚職の巣窟の一つがユニオンパシフィック鉄道であった。

シエラネバダのゴールドラッシュは一八四八年に始まった
 シエラネバダといえば、ヨセミテ国立公園が有名だ。南北で六百五十キロメートルになり、最高峰のホイットニーは四四一八メートルになる峻険な山脈だ。カリフォルニアとネバダに広がる大山脈である。

 米墨戦争が終わりカリフォルニアがアメリカに譲渡されたすぐ後、一八四八年の冬にカリフォルニアで金鉱が見つかった。サクラメントからシエラネバダ山脈に向かうアメリカン川から金が見つかったのである。

 金鉱の噂は世界中に広まり、ゴールド・ラッシュが巻き起こった。翌年の一八四九年だけでも八万人が世界中から押し寄せ、カリフォルニアの人口は、金を求めて一気にふくれあがった。ゴールドラッシュが加熱し、金はアメリカン川だけでなく、シエラネバダのあちこちで見つかるようになった。

081123-1.jpg
 映画『めぐり逢う大地』の時代は、一八六七年。当たり前だが、ゴールドラッシュの時期に符合する。「キングダム・カム」という地名は架空だが、ゴールド・ラッシュで栄えたそういう山中の町があっても不思議ではない。

 カリフォルニアの金は、どこでも短期間の間に掘り尽くされ、ゴールド・ラッシュは瞬く間に終焉した。おそらく「キングダム・カム」でも金は掘り尽くされていて、そういう中で、鉄道敷設のため調査隊が現れる。金がなくなった以上、町が発展するには、鉄道に頼るしかないのである。

困難だったセントラルパシフィック鉄道の敷設
 『めぐり逢う大地』は、ピーター・ミュロンが金鉱の町の顔役ディロンを、その愛人のルチアをミラ・ジョヴォヴィッチが演じる。鉄道会社の測量技師ダルグリッシュにウェス・ベントリーを配して、彼とともに町を訪れる親娘をナスターシャ・キンスキーサラ・ポーリーという組み合わせ。この五人の愛憎がこの映画のテーマである。

 と同時に、過酷な環境で敷設されるセントラルパシフィック鉄道の様子もなかなか見応えがある。険しい山中で崖を削ったりトンネルを掘るために、セントラルパシフィック鉄道はニトログリセリンを多用した。ニトログリセリンは一八四六年に合成された。そして一八六六年に、アルフレッド・ノーベルがニトログリセリンからダイナマイトを発明したのである。

 映画ではダイナマイトは登場しないが、ニトログリセリンで発破してダイナマイトの代わりに使用し、事故が起こる様子を描いている。ここでは調査時に事故が起こっているが、実際の線路工事でもニトログリセリンの事故が起こり、作業員の多くが死傷した。

 当時は南北戦争が終結した後であり、南北戦争中は労働者を集めるのが難しかった。セントラルパシフィック鉄道では、主に中国人を雇用した。そのため鉄道敷設後、サンフランシスコにチャイナタウンが生まれたという。

 なお、原作はトーマス・ハーディの「THE CLAIM」という。イギリスを舞台にしているが、ストーリーを多少参考にしている程度で、原作と呼ぶほどではなさそうだ。




 
posted by jin-k at 12:54 | Comment(0) | TrackBack(1) | アメリカ史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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