2010年01月12日

【アバター】異世界映像のリアリティを極める映画だった



 『ターミネーター』で一躍脚光を浴び、『エイリアン2』でSF映画監督として不動の地位をものにしたジェームズ・キャメロンが再び3Dを武器にして取り組んで監督した映画が『アバター』である。劇場公開映画としては『タイタニック』以来になるが、『ターミネーター2』から数えると18年ぶりのSF映画となる。

 
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 キャメロンが『アバター』の最初の脚本を書いたのは、1995年(公式パンフレットのインタビュー)だが、こういう映画を作りたい思ったのはティーンエイジャーの頃だったという。なにしろSFの黄金期は12才。当時の多くのSFからインスパイアされたことは間違いない。

 ジェームズ・キャメロンはエドガー・ライス・バローズの火星シリーズにインスパイアされたとインタビューで語ったともいうが、それだけでなく50年代、60年代に書かれたワンダーでアメージングなSFを貪欲に取り込んでいる。火星シリーズにインスパイアされたというのは、地球人が新たな肉体を纏い、まったくの異世界に飛び込んでヒーローになるというアイディアくらいだろう。

 50年代、60年代のSFを原型としているのは、設定からも読み取れる。西暦2154年では『スターウォーズ』や『スタートレック』のように宇宙空間をワープもできないから、最も近いアルファ・ケンタウリに亜光速で飛ぶことしかできない。重力を制御できないので宇宙船の中では無重力のままである。もっとも重力がコントロールできればアンオブタニウムを得るためにパンドラを侵略する必要はない。

100112-01.jpg クオリッチ大佐が操るAMP(Amplified Mobility Platform)スーツは、もちろんガンダムではなくハインラインの『宇宙の戦士』のパワードスーツだろうし、植物が支配する世界観はオールディスの『地球の長い午後』の影響を受けているのではないかと思わせる。空飛ぶとかげ「イクラン」に乗るのはマキャフリィの『竜の戦士』だろう。

 超伝導物質アンオブタニウムはまるで、ラピュタのように思える。しかし『天空の城ラピュタ』の飛行石はファンタジーに徹したが、ここではもう少し科学的に処理されている。超伝導様物質で大地が浮かび上がるというようなアイディアは、当時のSFではそれほど珍しくなかったはずである。

 この映画をSF小説として読めば、注目を集めることはまずないのではないか。ストーリーやシチュエーションに、斬新さはほとんどないからだ。おそらくアニメにしてしまえば、ありきたりのものになっただろう。『アバター』をアニメ化するのは全く難しくないからだ。

 これをアニメにせず実写にしたことが、キャメロンの本意だからである。未知の異世界のリアリティをどこまで実写で再現できるのか、ウソっぽい本物らしさではなく、「本物」にするためにパンドラのすべてをリアルなCGで描いたのである。ここにこそキャメロンの執念がある。

100112-02.jpg 『アバター』では、『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムのモーションキャプチャを進化させた。CGのキャラクターをビビットなものにするため、より精度の高いもの採用し「パフォーマンス・キャプチャー」と呼んだ。顔の表情はマーカーを使わず、そのまま撮影したものから取り込んで細かい演技までをCGに反映させ、CGキャラクターの生身の存在感を植え付けた。

 また、あまりに突拍子のない異世界だと感情移入が難しい。そこでナヴィをインディアンぽいイメージにしたのではないか。そうすることで、パンドラという世界観を観客は掴みやすくなる。観客は西部開拓時代に圧殺されたインディアンとナヴィたちを重ね合わせて観ることになるのだ。あるいは、AT-99スコーピオンガンシップのローター音で、ナパームが炸裂するベトナム戦争を想起するだろう。

 侵略側の地球人は『エイリアン2』とあまり代わり映えしない。海兵隊(正確には元海兵隊の傭兵)が登場して企業利益を代表する人物が登場する。つまり利益のために暴力を使う。リーダーは強面になったものの、人類のエゴを代表するのだ。まあいえば、キャメロンはそういった設定をあまりややこしくせずステロタイプにして、ストーリーには普遍的なテーマを据えたのである。

 SF映画は映像によって進化してきた。革新的な映像を伴わないサイファイは、いかに内容が良くても語るに足りないのが現実だろう。『2001年宇宙の旅』はリアルな宇宙空間を見事に描写したことで歴史に残った。つづく『スターウォーズ』もリアルな宇宙冒険活劇を再現して喝采を浴びたのだ。『エイリアン』はリアルな映像の中で、超一級のホラーを体感させた。

100112-03.jpg ただし、そういうCGを駆使しただけの映像では観客は感動しなくなった。単にリアルっぽいCGではなく、アメージングなCGを目指した映画が『アバター』なのではないか。3Dにこだわったのも、アメージングな世界観をより強烈にするためだろう。『アバター』は3Dで観るしかないエポックメーキングなSF映画なのである。

 『アバター』は、世界最速で興行収入10億ドルを突破し、競合する『タイタニック』すらも追い抜きそうな勢い。全世界の興行収入が10億ドルを越えたのは4作品しかない(『タイタニック』以外の3作品『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』『ダークナイト』はすべてサイファイ)。続編を望む声は、当分鳴り止まないに違いない。

 というわけで、主人公の元海兵隊のジェイク・サリーに一躍スターダムにのし上がったサム・ワーシントン、相手役のネイティリには大作への出演がつづくゾーイ・サルダナ。脇役にはシガニー・ウィーバー、スティーヴン・ラング、ミシェル・ロドリゲス、ジョヴァンニ・リビシが名を連ねる。






ジェームズ・キャメロン「アバター」のビジョンを語る



タグ:アバター
posted by jin-k at 16:44 | Comment(0) | TrackBack(2) | アクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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