2012年06月26日

【リアル・スティール】ATOMはなぜZEUSに負けなかったのか



 リチャード・マシスンの『リアル・スティール』という短編集にある『四角い墓場』を原作とした映画が『リアル・スティール』である。家族を捨ててロボットボクシングにのめり込む駄目オヤジと、ロボットボクシングゲームに逃避する息子が母親の死をきっかけに再開し、パートナーとしてリレーションを築くなかで親子の情愛を取り戻すまでを描く

 120626-01.jpg この映画の中でボクシングするロボットは第三世代だという。第三世代のロボット・ボクシングを確立させたのはタグ・マシドである。チャールズ・ケントンが中古で買った第三世代初期のロボット「ノイジーボーイ」はタグ・マシドが生み出したものであり、その系譜から進化したものが最強ロボット「ZEUS」ということになる。

 第一世代のロボットは人間のボクシングを模倣して始まったというが、映画の中には登場しない。登場するのは第二世代のスパーリングロボットのATOMだけである。ATOMが打たれ強いのは、ロボットの構造が違っているからだろう。第二世代までは内部の精密機器を守るために強固な骨格で作られていたに違いない。ATOMはスパーリング用なのでさらに堅牢なつくりになっていたと考えられる。

 骨格が堅牢であるということは、それだけロボットに重量があり、動作が緩慢だったといえる。そこで第三世代のロボットは内部機器を防御を薄くし筐体の重量を軽くしてスピードを上げたに違いない。腕を回すのはモーターで動作しているはずであり、腕が重すぎては軽快なパンチは望めない。内骨格の重量を軽くし外骨格で防御することで、よりスピーディなロボット・ボクシングを実現した。その嚆矢がかつてチャンピオンに輝いた「ノイジーボーイ」だったのである。

 一旦引退したタグ・マシドは復帰し、第三世代ロボットの攻撃パターンのプログラミングを行った。対戦するロボットの攻撃パターンを読み取り、その攻撃パターンに有効な反撃方法を人工知能的に動作させるのである。タグ・マシドが「ZEUSは無敵」というのは、ロボット・ボクシング攻撃パターン解析の完成度が完璧だと想っていたからであろう。

 ロボット・ボクシングといっても、ケントンがコントローラを持っていることでわかるように、鉄人28号のように人間が操作している。人間が操作するデメリットは、反応が遅いということに他ならない。ボクサーはパンチを繰り出すとき、いちいち考えながらアクションしているわけではないだろう。思考回路より早く体を動かさなければ勝つことはできないからだ。思考する以前に手がでているはずである。

 ロボットを人間のボクサーと同じかそれ以上に動作させるには、攻撃パターンを自動化するしかない。コントローラで指示しなくても、ロボットが判断してパンチを繰り出すロボットの登場である。それがタグ・マシドのいう「一瞬にしてファイティングコードを書き換える」という意味だ。そういう意味ではZEUSなどのロボットは第三・五世代といってもいいのではないか。

120626-02.jpg おそらくアンソニー・マッキー演じるフィンが仕切っているような場末のロボット・ボクシングでは少し前のコントローラを使ったロボットでボクシングするのが一般的であり、世界選手権のような大試合では、半自動でボクシングするロボットが主流になっていたわけである。まあいえばコンピュータ同士のチェスの試合をロボットが派手に殴り合って勝敗を決するエンターテインメントなのだ。

 そこに登場したのが第二世代のスパーリングロボットを改造したATOMだった。ATOMは内骨格が強固なので、多少打たれてもダメージを受けることが少ない。その代わり、動作は緩慢で有効なパンチを繰り出しにくい。つまりATOMのパンチは空振りすることになる。ZEUS相手だと動きを完全に読まれてしまうので、勝負にならないわけである。

 それではなぜATOMはZEUSと互角に戦ったのかというと、ATOMが最終ラウンドまで致命傷を負わなかったからに過ぎない。タグ・マシドは最終ラウンドまで戦うことを想定せずにZEUSのバッテリーを組み込んだからである。バッテリを大きくするとロボットの重量に負担が掛かるためだろう。だから人間のボクシングのようにガードを固めて、相手が疲れるまで待つという戦術が有効になったのである。

 ちなみにマックスがATOMを改造したとき、流用したのは

アンブッシュの「スピンフレーム」
ノイジーボーイの「サーキットスリーブ」

である。単語からでは何を意味するのかほとんどわからない。わかるのはコントローラ無しでもノイジーボーイの音声認識機能とシャドウ機能で指示できるようになり、動作が速くなったということである。

 もしコンピュータでの攻撃パターンの解析に限界があれば、ロボットの操作はケントンのように人間のアクションで戦うという次世代ロボットもあるかもしれない。映画のモーションキャプチャーのように、体中にセンサーを付けたボクサーが後ろに立ち、人間のボクサーの動きに合わせてロボット同士が戦うのも面白いかもしない。

 ところでこの映画の時代は2020年ということになっている。ATOMの製造年度は2014年で、ノイジーボーイの活躍していた時代は2016年となっている。ロボットの価格がどのくらいがわからないが、中古のノイジーボーイは映画の中では明示されていないが、おそらくチャーリーが受け取った五万ドルだろう。つまり高級車相当の価格で買えるのがボクシングロボットである。はてさて、ZEUSと戦ったATOMのファイトマネーはいくらだったのだろうか。

 そういえば、主演のヒュー・ジャックマンはファイトマネー、ではなく主演料を9万ドル貰ったらしい。動物園で初めてATOMのマックスと戦ったトサカ頭のキングピンは脚本を書いたジョン・ゲイティンズが演じているが、彼は脚本料とは別に出演料を貰ったのか。それともメトロが負けたので、俳優としてのギャラはなしかも。


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posted by jin-k at 20:57 | Comment(2) | TrackBack(0) | アクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このブログのタイトルのせいで映画を楽しめませんでした。4んでください。
Posted by 名無し at 2014年03月26日 09:23
とてもいいレビューだと思うのですが、「タグ・マシド」ではなく「タク・マシド」です。
Posted by 774 at 2017年03月09日 02:39
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