2017年07月09日

【13時間 ベンガジの秘密の兵士】バラクとヒラリーに見捨てられたCIAの秘密基地



 2011年にリビアで独裁者として君臨したカダフィの政権が倒された。カダフィを打倒したリビア国民評議会はベンガジに拠点があり、そこにアメリカ領事館とCIAの秘密基地があった。同じ年、アメリカで「イノセンス・オブ・ムスリム」というモハメッドを卑しめる映画が公開された。イスラム教徒がアメリカへの敵意を剥き出しにし、リビアのベンガジにいたアメリカ領事館を襲撃する。CIAの秘密基地にいた元アメリカ軍の兵隊が領事館にいた大使を救援に向かう。ここから13時間に渡るイスラムの過激派と元軍人の熾烈な戦闘が開始される。


 タイトルに「秘密の兵士」とあるが、秘密なのはCIAの基地であって、秘密基地に曰く付きの兵士がいたわけではない。兵士といっても正確にはCIAに雇われた保安要員である。「G.R.S.(グローバル・レスポンス・スタッフ)」という民間軍事請負業者から派遣されたチームであった。フィクションの戦争映画では元軍人からなる民間軍事請負業者はたいていが悪役であるが、ここでは死力を尽くしてアメリカ人を守ろうとする。

 最初のテロップにはこうある。

THE CIA BASE WAS PROTECTED:(CIAの基地を守るのは)
6 ELITE EX-MILITARY OPERATORS.(元軍人の精鋭6名)
CODE NAME: G.R.S.(コードネームはGRS)

 ベンガジにいた「G.R.S.」の元兵士はもともと5人だった。ヘッドはタイロン・ウッズ。海兵隊出身が3人、陸軍が1人である。タイロン・ウッズは海軍のネイビーシールズの出身だった。ベンガジがキナ臭くなったと感じたタイロンは、もと同僚のジャック・シルバに応援を乞う。物語は、ジャックがベンガジに到着するシーンから始まる。

 G.R.S.のメンバーは

タイロン・“ロン”・ウッズ 元ネイビーシールズ
ジャック・“ジャック”・シルバ 元ネイビーシールズ
クリス・“タント”・パラント 元陸軍
デイヴ・“ブーン”・ベントン 元海兵隊
マーク・“オズ”・ガイスト 元海兵隊
ジョン・“ティグ”・タイジェン 元海兵隊

 である。これにあとからトリポリにいた

グレン・“ボブ”・ドハティ 元ネイビーシールズ

が加勢する。タントは陸軍でレンジャー出身と字幕にあったが、上官のベレー帽云々という会話があるから、ひょっとすると特殊部隊としては、いまは影が薄いグリーンベレー(スペシャル・フォース)かもしれない。海兵隊が多いのはスナイパーが必要だったからだろう。実際に映画を見ると、スナイパーの腕が重要であることがよくわかる。

13_hours_dvd.jpg

 ところで、この映画は実話に基づいている。ミッチェル・ザッコフの書籍『13 Hours: The Inside Account of What Really Happened in Benghazi』を原作にして、マイケル・ベイが監督して映画化している。こうしたアメリカ軍の近年の大きな戦いや事件を実話ベースに映画化したものは結構多いと思っていたが、調べてみると、実際にはそれほどなかった。

1980年1月27日 アルゴ(イランアメリカ大使館人質事件)
1993年10月3日 ブラックホーク・ダウン(モガディシュの戦闘)
2005年6月27日 ローン・サバイバー(レッド・ウィング作戦)
2011年5月2日 ゼロ・ダーク・サーティ(ビン・ラーディンの殺害)
2012年9月11日 13時間 ベンガジの秘密の兵士(2012年アメリカ在外公館襲撃事件)

 こんな感じである。これにあと追加するとソビエトのアフガニスタン侵攻をCIAが裏から支援する『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』ぐらいだろうか。『アメリカン・スナイパー』は実話だが、なんらかの事件や戦闘をテーマにしているわけではない。

 アメリカの戦争映画で実話ベースのものを検索すると、『プライベート・ライアン』や『ハート・ロッカー』とかが上がっていて、ちょっとビックリしてしまった。『プライベート・ライアン』は冒頭のノルマンディ上陸作戦は実話でも、ライアン兵卒の探索はまったくのフィクションで、最後のラメルという町は町そのものが架空である。実話なのは『プライベート・ライアン』のあとに製作された『バンド・オブ・ブラザース』で、こちらは間違いなく実話である。『ハート・ロッカー』に至っては、イラン戦争以外は完全なフィクションで、どうして「実話」と思ったのか理解に苦しむところだ。

13_hours_BR.jpg
 ベンガジのCIA秘密基地はなぜ「秘密」なのだろうか。それはこの基地がカダフィの残した武器を回収し、シリアの反政府組織に送るという目的を持っていたからだという説がある。アメリカの施設を襲ったイスラムの過激派は、スチーブンス大使の抹殺を狙ったのではなく、CIA秘密基地を破壊しようとしていたという。つまり、まず領事館を襲い、CIAの保安要員を基地からおびき寄せたのである。秘密基地に保安要員がいなければ、基地の奪取は容易い。

 CIAのチーフが「まて」といったのは、スチーブンス大使の命より、秘密基地を守るほうが優先度が高かったからである。おそらく基地にはリビア国内にあったカダフィの武器のリスト、シリアに送った武器のリストがあったに違いない。そのリストはイスラム過激派には決して渡してはならない。秘密の役目を持った基地であったが故に、近隣の米軍基地からの支援はいっさいなかった。オバマかクリントンの決裁が必要だったのだろう。

 この事件は、当時大統領であったバラク・オバマと国務長官ヒラリー・クリントンの優柔不断さが生んだ事件だったかもしれない。事件は2012年9月だが、ヒラリー・クリントンは同年12月に「ウイルス性の胃腸炎に伴う脱水症状で倒れた」という。ウイルス性の胃腸炎はいわゆるノロウイルスなどのことで、その程度で倒れるというのは、ひょっとすると、ヒラリー・クリントンはこの事件の後、精神的に追い込まれていた可能性はある。

 事件の結果、アメリカはリビアから撤退し、リビアは分裂して複数の勢力による内乱状態になった。さらにカダフィの武器の一部はISIS(アイシス)もしくはISIL(アイシル)に流れ込んで、彼らの勢力の拡大に貢献した。現在、ISILはリビアにも拠点を持っている。意地悪くいえば、アメリカはポストカダフィ対策に失敗し、カダフィの武器をイスラム過激派に提供して彼らを増長させたといえそうだ。

 トリポリにいたグレンを含めて7名の元兵隊のうち2人が戦死した。残る5名の元兵士は、CIAをやめて銃を捨てた。映画の中の生々しい戦闘シーンを見ていると、もう一度戦場に立ちたくないという気持ちは理解できる。

 この映画の中で、よく知られた俳優はロンを演じたジェームズ・バッジ・デールとオズのマックス・マーティーニだろうか。ジェームズ・バッジ・デールは『24 -TWENTY FOUR-』シーズン3でジャック・バウアーの相棒になり、そのあと『ザ・パシフィック』で主演の一人を務めた。『アイアンマン3』『ローン・レンジャー』『ワールド・ウォーZ』などにも出演している。最初はつるんとした感じだったが、最近は男っぷりがよくなった。

 マックス・マーティーニもTVドラマの出演が多いが、最近では『パシフィック・リム』のハーク・ハンセンが記憶に新しい。彼は『プライベート・ライアン』でライアン兵卒と一緒にいたヘンダーソン伍長も演じている。マックス・マーティーニも兵士の役が多いようだ。年齢的に、これからは軍隊の司令官役とかが多くなってきそうである。

 ついでにいうと、主演のジャック・シルバを演じたジョン・クラシンスキーは、エミリー・ブラントの旦那。グレン・ドハティのトビー・スティーブンスは、俳優ロバート・スティーブンスの息子だが、母親はハリー・ポッターのミネルバ・マクゴナガル先生のマギー・スミスである。








posted by jin-k at 14:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 国際社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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